bon now

ありのままの現実を書き殴る吐き溜め。底辺SEの備忘録。
Written by bon who just a foolish IT Engineer.

NO HARD WORKを読んだ

Created Date: 2019/04/03 01:05
Updated Date: 2024/01/01 00:26

37Signalsといえば、Railsの生みの親DHH(David Heinemeier Hansson)氏の立ち上げた会社で、 現在はBasecamp社に名前を変え、同名のソフトウェアを販売しているアメリカのソフトウェア企業だ。 この会社の特徴というべき特異な点は「穏やかな組織」を運営し続けている点にある。 会社設立当初から変わることのない一貫した経営理念が、20年近く続いているという事実もまたその一つである。

有名な過去2冊の本「小さなチーム、大きな仕事」「強いチームはオフィスを捨てる」に続き、 今回ボクが読んだのが以下の「NO HARD WORK! 無駄ゼロで結果を出す 僕らの働き方」である。

章構成をベースに書評をやっていこうと思う。
この本の章はこんな感じ。

  • はじめに
  • 大志は抑えて
  • 自分の時間を大切に
  • 組織文化を育てる
  • プロセスを解体する
  • ビジネスに力をいれる
  • おわりに

はじめに

まず多くの人が当たり前と思っている仕事の進め方に疑問を呈することから始まる。これは多分別の2冊でも同じじゃないかな。 みんなメールの返事やチャットへの返事で作業が中断されてしまい、その分の集中力の欠如と無駄な作業時間の削られ方はヤバ過ぎる&ストレスであると本書では言い切っている。 そしてこのストレスや時間の浪費はプライベートな時間、家族、チームメイトへと悪い意味で伝搬され、人生を台無しにするという。

そこで彼らが唱えるのが「穏やかな会社(カンパニー)を作る努力を使用」である。

彼らは会社は製品であるという思想で、バグだって生むし改善が必要なときもあることを前提に、 会社を上手く自分たちの理想のとおりに機能するようバグは直し、機能は改善させ、新しい何かを実装し、成長させていくことを推奨している。 そしてこれが、昨今の企業経営のデファクトスタンダードでないことももちろん承知の上で、である。

大志は抑えて

誰だって自分の理想を持っているし、それを他人と比較して「あいつは頑張ってない」だとか「俺はこんなに努力しているのに」だとかいう不毛な競争と頑張り合いはやめよう、というのが本書の説く部分である。

例えばBasecamp社には明確な中期経営計画とか年度目標がないらしい。まじかよと思うけどまじらしい。 彼らは「自分たちが良いと思うものにベストを尽くす」というスタンスでやっている。
乱暴な言葉で言えば「自分たちのやってることはすべて今の顧客のためになるし、今後の成長につながる」ということを確信して作業をしているということである。 もっと言えば「僕らのやり方や考え方が気に食わない人はユーザーにならなくていい」という究極の「サービス作ってる俺らが神」を体現しているわけである。

ビジネスを維持する目標だけ立てたらあとは数字なんてまやかしだ。信じたことを一生懸命やればいい。このスタンスを20年続けているのだから、 できないということはない(できそうにもないけど)。
昨今の資本主義社会やシリコンバレー式の0to1みたいな野心の燃やし方についてはクソくらえということである。

自分の時間を大切に

1週間の労働時間は40時間で十分と太字で言ってる。 時間が長く感じるのは同じ時を過ごす時間がまとまっているからで、仕事中に時間の流れが早いと感じたときは「仕事が分断されている」ときだという。 確かにそうだ。大体忙しい日(打ち合わせがあったり、レビューがあったり、会議があったりと違うことの連続する日)は時間のすぎる感覚が早い。

Basecampは定例会議さえもやってないらしい。とにかくみんなの時間を割いてまでなにかしなければならないといった状況にならないよう、 努力をしているということだそう。チームみんながそうすれば、余計なやり取りは確かになくなりそうな印象はある。

そして生産性よりも効率を重視しろと説いている。これはそうだと思う。そういう意味ではフレックス制でコアタイムのある勤務体系よりも 裁量労働制のほうが良いんじゃないかと思うが、それはそれで経理側がちょっち面倒な面があるか、 文化的にうまくできていないと簡単に作業の質や量のバランスが人によって破綻するみたいなリスクもついてくるんじゃないだろうか。 そのへんをうまく制御するためにも、最初っからBasecampのように文化を作っておく事が重要なのである。

また、Basecampではメールやチャットは基本「いつ返事が帰ってくるかわからない連絡」として捉えられているそうだ。 なのでマジですぐにでも連絡が欲しい場合は電話でもしてるんだろう。知らんけど。
一応救済措置として、週に1日の数時間を「何でも聞いて良い時間」として、それぞれのエキスパートが学校を開講するがごとく質問タイムのスケジュールを確保しているという。 まぁそういう文化なので、「野球はXXが勝ったらしい」とか「新しいゲームが発売された」とか仕事に関係のないことは基本無視されるらしい。 これらは本書で「FOMO(Fear Of Missing Out)」という感情と「JOMO(Joy Of Missing Out)」という感情に分けて議論されており、 前者は要するに「新しい情報から取り残される不安」を煽られてTwitterみたりFacebookみたりする時間の無駄な作業とし、 後者を「見逃す喜び」として情報を得なかった時間で自分の作業に集中できた良い時間と捉えることで、穏やかな組織を成り立たせているわけである。

個人的には言うは易く行うは難しを地でゆく施策だなと感じる。

組織文化を育てる

この章は私がこれまで読んできた典型的なシリコンバレー企業の話であるHARD THINGSや、ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるかと、 なぜかほとんど同じことが書かれている。
これはつまりどんな企業であっても、組織・企業文化を育てる方法は共通である、ということを僕に印象づけた部分なので、 この本を読む場合もこの章は熟読する価値があると思う。

まず上司が率先して組織を育てる意識を持とうという事が書かれている。良いところも悪いところも、 結局上司が深から真似されるので、そこはちゃんとしようねという当たり前のことである。 また、人間関係はだいたいの職場環境の良し悪しを握る重要な要素なので、信頼関係はしっかりと意識しましょうということもまた言われている。 この辺はそのへんの企業でも真似できるし、むしろやらなきゃいけないことだろう。

そして上司は「待ちのスタンス」ではなく「聞きに行くスタンス」で仕事しろとも書かれている。そのほうが断然効率が良いということだろう。たしかにそうだ。 ネット上では「聞きに行ったら今忙しい!と言われ、聞かなかったら何やってんだ!と怒られ、また聞くとそんなことは自分で考えろ!と言われる」みたいな揶揄をみかけるけど、 そんなめんどくさいことを起こすまえに上司自ら聞けばすべてが解決するということである。そのとおりである。

そしてこれもまたどの本でも言われているように「オーナー(経営者)の言葉はとんでもなく重い」という。考えなくてもわかる。企業の柱はオーナーである。 彼らの発言は会社の方針=文化と同じである。いち社員の僕には関係ないけど、いつか社長になる人は覚えておこう。

人材採用についても少し触れられている。本書では新しい領域へのチャレンジは直ぐに結果が出るものではないから、 専門性の高い人を採用する場合も過度な期待はしないこと、そして経歴書や履歴書よりも仕事内容を重要視すること、と書かれている。 Basecampでは仕事の質を評価するために、採用前に実際のプロジェクトに放り込むということをやるそうだ。 確かに、それなら仕事の遂行スキルと企業文化の適正とがいっぺんにわかる。ああ、そういえばメンローイ・ノベーションズも同じようにやってたっけ。 それと、企業規模に合う人材を採用することも書かれている。これはHARD THINGSでも同じことが書かれていた。 ベンチャー企業のマネジャーと大企業のマネジャーはやることも考えることも全く違うので、ギャップを埋めるための努力ができるかどうかと、 その役割は今本当に必要なのかを熟考して採用判断しなければならないということである。まぁこの辺も「企業文化とスキルのマッチングを検討する」っていう一言に尽きる。

あとはよく寝て健康になろうとか、巷で話題のワークライフバランスはまやかしとか書かれてる。 どっちかというと企業側が従業員に強いる労働条件のほうが、彼らの私生活よりも比重が重くなりやすいという点で。 まぁそうだろうと思うけど、そこは若干しょうがないかなーとも思う。管理のしやすさや仕事の評価を考慮すると、やっぱりみんなが一様に作業してくれたほうがありがたいだろうし……。

ちなみにBasecampは2019年現在は給与をサンフランシスコの業界トップ10%と同額程度支払うという一律の条件で社員を雇っているそうだ。 そうすることで面倒な給与査定と競争を避けて通っているという。利益がありつつ従業員の少ない会社だからこそできる手段だなぁと思う。 加えてBasecampの福利厚生もとてもユニークで、これは多分ググればすぐにでてくるのでぜひ見てほしい。
(こことか: https://tabi-labo.com/240343/basecamp)
そして、嬉しいことにBasecampもまた「無料の食堂提供や社内オフィスでの外部サービス提供」については人を釣る餌と辛辣に批判しており、 これもまた上述した本たちの中でも否定的に捉えられているのと同じ結果だった。僕もそう思う。それは福利厚生ではないないよね。

また、退職が決まった時の対応は「即時全員に通知を出す」ことにしているそうだ。これもHARD THINGSと同じ。 穏やかな別れ、もとい誰にも波風の立たないような手段としては、解雇・退職が決まった時点ですぐに全員に例外なく通知することが望ましいらしい。

プロセスを解体する

重要なことは即断即決せず、ゆっくり議論して決めることをBasecampでは推奨している。 Bacesampって個人が仕事しているイメージかも知れないが、実際は2、3人のチームで仕事をしていると書かれている。 1人のデザイナーに1、2名のエンジニアがつくという感じ。なのでこのチーム内では多分、ここまで書かれている通りの穏やかでない会話もちょっとはあるんじゃないかなと僕は思う。 でもそれはしょうがない。個人に目標を決めることが決められているとはいえ、 チーム全体で業務遂行できなければ誰かが誰かの足を引っ張ったということにもなり得るし、それはそれで穏やかではない。 この章でもスケジュールのデッドライン決めだとか文化のねじれの修正方法だとか、1人1人が主体的に自分の行動を振り返って、 みんな(チーム)で守る・良くする・直すことができるような行動の重要性について書かれている。
後回しにしないとか、依存はできるだけ無くすとか、人間関係と同じようなことを作業のプロセスにも適用することを説いているわけだ。

また、責任(決定権)についても基本は個人に持たせるようにすることで自浄作用の最適化を促している。 何でもかんでも手を出すのではなく、やるべきことに集中するということや、あえて何もしないという選択肢を選ぶ勇気、 他の誰かのベストプラクティス(大抵は自分らの組織にそのまま適用できない)を信じないこと、 ノーと言える勇気など、仕事というよりも生きる上での考え方についてもこの章では書かれている。
要するにストレスなく生きることは、ストレスなく働くことと同意義なんだなと僕は思った次第である。

生きてるなかでTODOリストを毎回用意する?って話。僕はよく忘れるので何かしらの買い出し時のメモみたいなことはするけど、 休日の過ごし方をすべてTODOリスト化することはない。誰だってそうだろう。 だったら、それは仕事でも不要なんじゃない?ってのがBasecampの言わんとするところなのではないだろうか。

ビジネスに力を入れる

金があるうちは多少リスクのあることをやっても、その失敗を埋め合わせできるんだよーと要約するとそう書かれている。 また、仕事の緩急の付け方だとか、利益を追い求めすぎない(ある程度の利益で満足し、次の詩ごとをするなど)とか、 そういったライフハック的なこともまたビジネス解決の1つの手段であることに気付かされる。

Basecampは自分たちの製品を気に食わない顧客を追わない。去る者は追わず来る者は拒まずの精神である。 このスタンスが穏やかな組織、穏やかな仕事の流れを作り出している所以である。 ペルソナとか面倒なこと考えずに、自分たちができたと思ったら市場に出して反応を見るだけで答えがわかるのなら、 それでいいやん?というスタンスである。
たしかにそうだ。でも、これができるようになるには地盤固めが必要だしそれなりに大変じゃね?と思ってしまうのは僕がまだ経営とはなんたるかを知らないせいだろうか……?

ちなみにBasecampには出資者が存在しない。最近よく聞くスタートアップのVCからの資金調達とかいう類のことを一切していないのである! これもまた穏やかな組織を作るための1つの施策である。社外から自分らの取り組み方にイチャモンをつけられては意味がない。

あとこの章での重要な点は「人は自分の求める変化であれば許容する」という話だろうか。 これはつまり今現状で満足しているユーザーに余計なUI変更は無駄な努力ということを示している。 だったら「今のUIに不満のある人」もしくは「新しいUIを使いたい人」に向けて新UIをリリースすればいいじゃない?という結論に達している。

全然別の製品だけど、最近のOutlookって「新UIを試してみる」っていうトグルが表示されていて、使いたい人が選べるようになっているなぁと思った。 真のUXってこういうことなんだろうな。

この章の最後に「ビジネスは始めるのは簡単だけど継続が大変」と書かれていてそのとおりだなと思った。 これに「やめることもまた大変」というものを加えてもいいんじゃないかなというのが僕の感想。まじで、やっちゃったことの風呂敷を畳むのは大変。

おわりに

特になし。穏やかな時間を手に入れよう!


まとめ

穏やかな組織を作りたいとは思うけど、これを全部真似することは難しいなと思う。 作るべきサービスが比較的市場規模が小さく利益が定期的に出てそんなに競合他社もいない穴場な部分だったらいいんだけど、 戦争ふっかけられそうな場所に陣取っちゃった場合穏やかでいればいるほど追い詰められそうと思ってしまう。 というのも、自分たちが穏やかであっても、市場の波は大きくなり、風は吹き荒れ価格は競争に巻き込まれみたいな、 外的要因で穏やかさがぶっ壊されるリスクのほうがでかそうだと僕が感じるからだ。

とはいえ、最初っからBasecampも穏やかだったわけではなく、「穏やかでいよう!」と努力して改善してきたからこそ今があるわけで、 やってもないやつがあーだこーだ批評したところでどうってことはない。 明日からでも生活の一部に取り入れていってもいいんじゃないだろうか。

特にこの本はビジネス書というよりは、僕もところどころ書いてるように「穏やかに過ごすためのライフハック」に通ずる考え方が書かれているので、 まずはそういったプライベートな部分や自分自身の穏やかさを大切にすることでも、 仕事の質を向上させ、穏やかな仕事の進め方を模索する手段になるんじゃないかと思う。

そういうわけで、20年間ずっと同じことを貫き通して同じような本を書き続けることのできるブレないBasecampの姿勢は、 人生の生き方として学ぶべきことが多いというのが僕の最終的な感想である。

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